訓練の成果を試す時は意外なタイミングでやってきた。 さあご披露致しましょう。 ひらりと馬にまたがるも。 暑さに体力もやる気も奪われるのであった。    この暑さでは寿司ネタは腐るでしょう 馬が二頭残っていて良かった。 さすがに三人で一頭に乗れはしない。 馬は多人数用自転車ではないのだ。 「なんかズルイような気がするよなぁ」 「何が?」 「何でいつの間にか馬に乗れるようになってんだよ!」 「仕方ないじゃん!私ノーコンなんだから!」 有利はグウェンダルと相乗り。 それに対して私は頑張って一人乗り。 私と有利は眞魔国にいる間、コンラッドを取り合っている。 有利は野球の相手、私は剣と馬術の教えてもらう相手として。 野球をできるのはコンラッドしかいないし、教え方がうまくて怖くないのもコンラッドしかいないからだ。 一緒に野球をできればいいのかもしれないが、あいにく私はノーコンである。 コントロールの酷さはもちろん、距離も伸びないからキャッチボールすら難しい。 仮にやったとしても、有利には物足りないだろう。 「執務を抜け出してやっているのだ。ものになっていなければ意味がない」 「「………」」 すいません。 私と有利は入れ替わりでサボっている。 「………」 暑い。 一人で乗れるようになったといっても、まだ走らせたりはできないし、長距離も無理だ。 今回だって、砂漠を行くということで、コンラッドに乗せてもらった。 体力的にキツイ。 サウナにずっと入ってるようなものだし。 「おい」 「はい?」 グウェンダルが有利に水を差し出していた。 向こうは二人乗りの代わりに、水一つだからなぁ。 水嚢を独り占めしているのは申し訳ない。 といっても、もう残り少ないけれど。 「口をこじ開けられたいか?」 「…いただきます」 さすがグウェンダルだ。 泣く子も黙るだろう。 「………」 そんなグウェンダルの威圧感と暑さによって、口を閉ざしてしまう。 そうなると、ヴォルフラム達が心配になる。 コンラッドはパンダ…じゃない、砂熊との遭遇経験があると言っていたから、対処法もあるはず。 「気のせいかな、街が見えるんだけど」 「よくある幻ってヤツじゃなくて…?」 グウェンダルは答えてくれないけれど、進行方向は街(仮)だ。 近づくにつれて、それが本物だと安堵する。 街は警備兵が多いけれど、そこの住民である男の人は見当たらない。 子供や女の人はいるのにな。 「どういう街だろ」 私たちが馬のまま乗り入れようとすると、警備の責任者らしき兵が寄って来た。 …変な髪形。 「…イクラの軍艦巻き」 「ぶっ……!」 吹き出しかけて慌てて口を押さえた。 なんという的確な表現! 「馬は入れねぇ」 グウェンダルは黙って鞍から降りたので、私もそれに倣った。 顔を隠すように、と聞こえたけれど、それは私には必要なかったようだ。 降りた途端、立ちくらみに襲われた。 顔を上げているなんてとてもできない。 「砂丘からキたのか」 「ああ」 「ほう、そりゃすげえ!ヒねもすに遭わなかったのか」 「遭わなかったな」 「運がイイな!」 「馬を休ませたい、それに水と食糧を調達したい。宿はあるか?」 「さあ、シらねえ」 集団はゲヒゲヒと笑う。 具合が悪くて気分が最悪な私をさらに落とす。