あんなに暑かったくせに、夜は冷える。 これなら簡単に風邪をひけそうだ。 空に星が輝き始めた頃。 私の体調はようやく落ち着いた。 夢を見た気がした 陽が暮れてしまうということで、結局はこの街で宿をとることになった。 一度顔を見られている私は、フードを思い切り深く被って言葉も発しないようにした。 砂漠の夜は冷えるという。 有利達は大丈夫だろうか。 「眠れませんか?」 「え?いや…有利達が心配だなって」 眠れない理由はもう一つある。 コンラッドと相部屋なのだ。 護衛のためなんだろうけど…二人きりなんて。 「そうですね。この土地は魔族には不利ですから」 「不利?」 「法力、という魔力とは別の要素に満ちているんです」 「法力って?」 「魔術は魔族だけが使えますが、人間には法術というものがあるんです。神に誓いを立てることで使えるんですよ」 魔族と人間って、そういうところでも違うんだな。 「…あのね、コンラッド」 「はい?」 「もう一つ不安なことがあるの」 「何ですか?」 「有利、しゃべれなくても平気なのかなぁって…」 だって、有利はトルコ行進曲。 だって、逃亡仲間はグウェンダル。 初めてこの世界に来た時や、砂熊と遭遇してから街に着くまでの時間で私だって切なくなったのに、有利は大丈夫だろうか。 「まあ大丈夫でしょう」 「どこにそんな根拠が?」 「グウェンは小さくて可愛いものが好きだから」 その言葉にはどこか説得力があって。 なんか、納得せざるを得なかった。 「おはようございます、陛下」 「…おは、ぇええっ!?」 ゆっくりと瞼を開きかけたが、すぐに見開いた。 なんで! ここに! コンラッドが!? と、考えて、部屋を見て思い出した。 ここは血盟城じゃないってこと。 「陛下」 「な、なに?」 「左腕が…何かしましたか?」 何かって、何を。 寝相だって自信あるし、昨日はおとなしく寝てたはず…。 「あれ、赤くなってる」 「…痛みます?」 「いや、全然。日焼け…でもないよねぇ、なんでだろ」 左の手首がうっすら赤くなっていた。 「お前達!出発するぞ!」 勢い良くドアを開けて、フォンビーレフェルト卿は叫んだ。 わがままプーは普段と違い、朝から元気だ。