始まりはいつだって突然である。
予定はいつだって未定である。
シナリオは作者にしかわからないし。
次の瞬間何が起こるかだってわからない。
海にゆらゆら揺れながら
目を覚ますと、プカプカと浮かんでいた。
恐らく例のパターンか。
にしても、段々水辺の規模が大きくなってる気が。
「え…う、海!?」
体に力が入って、地上にいる時のように足が下に向いた。
が、地面に足がつくわけでもなく。
「げっ…」
ま、待ってよ!
私泳げないんだけど!?
「ごほっ…」
しょっぱい。
暴れると余計に水に捕らわれる。
服が水を吸って重い。
ああ、今回は服を着てて良かったな。
でもそのせいで沈みそうになってるわけ?
そういや、こういう時は力を抜くと浮くんだっけ?
いや、まさか。
それで死んだらどうしてくれるっ!
「ぷはっ…ぅっ!」
一度顔を水から出しても、それはその時だけのことにすぎない。
ヤバイ、どうしよう。
私、泳げないのに。
「陛下っ!?」
「!」
無駄に豪華な小舟がこちらに向かってくる。
ちょっと、そんなに漕がないで。
波が立つ、波が。
「死ぬかと思った…」
「陛下、ご無事で良かった…!」
「久しぶりだな、」
「久しぶり、有利」
まあこのメンバーが揃うこと自体久しぶりだ。
私と有利は地球に住んでるのに、向こうで連絡を取り合ったりしてないし。
そんな再会の一時に浸ろうとするが、ギュンターの叫びによって終わってしまった。
「ぎゃあああああ」
「な、何!?って、鮫ェ!?」
鮫と戦うとはなんと勇敢、無謀なんだギュンター!
ていうか、鮫!?
私たちは危機的状況ってヤツじゃ…。
「ベジタリアンらしいよ、こっちの鮫は」
「それと人懐っこいですから」
ギュンターを横目に思う。
ホントに?
「暑い………」
死の恐怖を与えた海から引き上げてもらったものの、そっちの方が涼しい気がしてきた。
ぐっしょり濡れた服が、気持ち悪いったらない。
「そうか、二人ともこちらにいたのか…」
コンラッドが、誰にでもなく呟いた。