卑怯者は、正しいひとの前では臆病になります。
卑怯者は、暴かれることを恐れます。
卑怯者は、本当は。
正義に憧れています。
魔王たちの会議
「えっと、からどうぞ」
「有利から言えばいいよ」
なんだ、この純情カップルみたいなノリは。
「…あのさ、有利」
「なに?」
「ごめん」
「なにが?」
「…モルギフのために駆け巡ってた時、有利が怖がってるって、知ってた」
だけど、自分は身体が辛いから、なんて思って知らないふりをした。
「べ、べつに怖がってたわけじゃ…」
「闘技場に連れてかれる時も、なんとなくおかしいって気付いてた」
「…」
「だけど私、自分が可愛くて気付かないふりをしたんだよ」
本当の小心者は有利ではなく、この私だ。
「おれさ…確かにコロシアムは怖かったけど。おれで良かったよ」
「は?」
「にあんなことさせずに済んで良かった」
なんでこんなこと言えるんだろう、と思うけど。
それが有利なんだろう。
「私はそんな目に遭わなくて済んで良かったーって思ってるかもよ?」
「うん、いいじゃんそれで」
「良くないっ!二人で魔王だなんて言いながら、有利に押し付けてばっかりなんだよ!?」
私がいきなり大声を出したせいか、有利は一瞬驚いて。
けど、すぐに笑う。
「そうやって声荒げてくれるんなら、いいんじゃねーの?」
「…なんでそんなこと言えるかな」
「おれ、魔王が二人で良かったって思ってるよ」
「かたっぽは正義の人で、もうかたっぽは卑怯なヤツだよ?」
「おれは正義感しかないからなー。でもの言葉に気付かされることもあるし。おれ、この世界で独りじゃないんだって思うし」
確かに、この世界で私たちは多分二人きりの地球人だ。
「でさ、おれ…モルギフをこの島に置いて行きたいんだ」
「憎しみは憎しみしか生まないからね」
私はまた許されて、歩き出す。
私も有利が魔王で良かったよ。
「あの奥さんの言葉が引っ掛かってるんだ。人間だってもっと強い武器をっていう」
「誰かが武装すれば、それに負けないようにまた誰かがさらに強くなろうとする」
「強い国といい国ってのは、同じじゃないよな?」
「うん、そうだと思う」
話す必要なんてなかった。
「置いて行こう、この島に」
意見は、はじめから同じだったのだから。