有利は私のために手を握ってきたんじゃない。
おそらく自分を保つため。
こんな私を。
頼ってくれるのか。
むずかしいはなし
「どちらの陛下もそんなことを望んじゃいない!王をないがしろにして国政を操るのは、謀反と同じことだ!」
「ないがしろに?してねーだろ。陛下が戦争したくないと仰るから、オレたちは魔剣を取りにきたんじゃねぇか。
確かに強い武器を持つのは悪いことじゃない。だったらいっそ、最強の兵器を手に入れて、どこよりも強くなっちまえばいい。
そうすりゃ隣国も攻められない。なるほど、陛下のお考えにも一理ある。だからこうやってちゃんと協力したさ。
このまま陛下がモルギフを持って帰国すりゃあ、歴代魔王の中での地位も高くなる。強き王として民にも支持される。
オレたちのどこが間違ってるって!?どこがないがしろにしてるって?」
「あんな危険な目に遭わせることはないだろう!?あんな、へたをしたら怪我だけでは済まなかったかもしれない…ましてや陛下に人を殺させるなんて、そんな」
「結局お前はさぁ」
ヨザックの口調が、変わる。
「あの二人が大事なんだろ?表向きは人間との共存のためなんて言ってっけど、新しい王サマを傷付けたくないから、一生懸命、誉めて守って持ち上げてるんだろ」
「お前は何も判ってない」
「判ってるってぇ。そんなに大切な王サマなら、箱に入れて城の奥にしまっておけばいい。部屋に閉じ込めて出さなけりゃいいのに」
「ヨザック!」
「高価な石でもかけてやって、なあ」
ぎゅ、と有利の手の力が強くなった。
「お前たちは、あれだけ嫌っていたシュトッフェルと同じやり方をしようとしているんだぞ。
前王ツェツィーリエ陛下と同じ過ちを、新王陛下に犯させようとしている」
「違うね、ウェラー卿、コンラート閣下。ツェリ様の間違いは、ご自分で統治されなかったことじゃない。
あの方は、誰に任せるかを間違われたんだ。選ぶ人物を間違えたのさ」
「…フォンヴォルテール卿に任せるべきだったと?」
「いや」
ヨザックはそこでふと口をつぐむ。
「…今となっては全てが手遅れだ。二度とあんなことにならないように、今度はしくじるわけにいかねぇよな」
いつかそれが何なのか、私は知ることができるのだろうか。
「お前たちがどんな謀略を巡らせようと、陛下を傀儡にできはしない」
「わっかんねーかなぁ、傀儡じゃねーって。愛があんのよ、ちゃんと愛が」
「だとしてもだ!再びこのようなことが起こり、ユーリとに危険が及んだときには」
妙に、長く、重い、沈黙。
「…その生命、ないものと思え」
押し殺した、聞いたこともないようなコンラッドの声。
足音が聞こえてきたので、慌てて私たちは階段を下りた。
「あのさ、」
「なに、有利」
「ちょっと相談したいんだけど」
「ああ、偶然。私も相談したいんだけど」
多分、同じことだ。
「じゃあ、せーので言ってみようか」
「そうだね、せーのっ」
「「モルギフについてなんだけど」」
有利の部屋だとヴォルフラムが乱入してきそうなので、私の部屋で話すことにする。