おとなはむずかしいはなしばかりする。

こどもはきいちゃいけないの?

どうしたらわたしたちは。

おうさまになれますか。



   置き去りのおうさま



超豪華クルーザーは殿方に是非に、と言われたそうで。
さすがツェリ様。
あなたになら世界中の男が貢ぐでしょう。



「陛下たちは相変わらず可愛らしくていらっしゃるのね。ねぇ、ユーリ陛下。あたくしの息子と進展はあって?」

「ししし進展はないデス」

「あら残念。せっかくいろいろ想像していたのに」



イロイロですか。



陛下は?」

「あるわけないですっ!」



婚約すらしてないし。



「ということはまだあたくしにも希望が残されてるのね?」



え、と思わず固まったが、ターゲットは有利だったらしい。
ああ、びっくりした。



「母上、そんなことより早く船を出してください。怪我人もいるし、陛下もお疲れです。癒しの手の一族を連れていますか」

「そんなことシュバリエに言ってちょうだい」



シュバリエはリックを運んでくれた金髪の男の人で、ツェリ様が連れているお供だそうだ。



「怪我人がいるの?あらまあ」



瀕死の状態のリックを見て、ツェリ様は可愛らしく唇に指をあてた。



「…矢人間ね」



…さすが魔族。



「ちょうどよかった。癒し系美中年を乗せていてよ。でもあたくしの美容専門だから、治療はどうかしら…」



エステティシャンということだろうか。
癒し系美中年と癒し手の一族は全然かけ離れている気がするんですが。



「それより陛下っ、魔剣を手に入れてらしたんでしょう?ねぇあたくしにも見せてくださらない?」



有利がモルギフの布を剥いだ瞬間。
ツェリ様の喜びようといったら。



「すごいわ、こんな不細工な剣は初めて!ねえ陛下、あたくしの部屋に飾ってはだめ?」



…さすが。
コンラッドがキャビンから出て行く。
そしてそれを追う有利を見て、私もさらに追った。



「どういうつもりだ!?」

「なにが」



階段の途中にいる有利に追い付く。
壁に叩きつけられる音。
多分、ヨザックだ。



「ヴォルフラムが祭りについて知らないのは本当だ。あいつは人間に興味がないからな。だがお前は十二を過ぎるまでシマロン本国で育ったんだ。
 文字が読めないはずがない!よからぬ行事に関しても、聞いてないわけがないだろう!」



…やっぱり。



「うまくいきそうだったじゃねーか。いざって時に陛下が怖気づきさえしなけりゃ、あのガキの命を吸ってモルギフも満足だ。
 ま、結果的に爺さんので我慢したみてぇだが。これで魔剣をいつでも使える状態にして、国に持って帰れるだろ。
 使えねぇもん持ってたところで、敵国は怖がっちゃくれないかんな」

「…お前のやり方は、間違ってる」

「どこが?だってあんなお子様みたいな陛下に任せといたら、この国はどうなるかわかんねーぞ!?
 背後からうまーく舵とりゃいいんだよ。陛下だってその方が楽なはずだ。陛下はそうかもしれないぜ?
 薄々気付いてたみてーだが、コロシアムに行く俺たちを止めなかった」



ギリ、と手を握る。
が、それを包むぬくもりがあった。

有利、どうして?

本人達に聞かれているとは露知らず、口論はエスカレートする。